思い出

思い出

花見満開の桜が丘の上で光っているこんなに今輝いているのに喜怒哀楽の遺伝子が 通り過ぎていく毎年頼りない心を包んでいるあちらで酒盛りだ人の世の一瞬でしかないのに花の心と呼応して束の間の時を個人のはかなさを共有していく
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カエルは見ていた大きな才能は 全てを受け入れる小さな才能は 全てを拒否しているその間に私達はいるのだが春の田圃の水の中カエルが目だけ出し世の中を見ているどの人間もせわしく せわしく見えて目を見開いていたのは当然のことだった
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民衆の願い気を付けなければならない上に立つ者が必ず優れているとは限らない本当の人は たまにしか出てこない優れて劣る勝者は溢れているそして それに抵抗出来るのは我々の忘れっぽい 当てにならない勤勉さだから 時はゆっくりしか進まない嘆きは満ちる...
思い出

耳今は昔 今は昔人は昔しか聞こえない人は未来は見ようとするだから耳は大事大事なことを知っている失聴は古と離れること失明は先を手放すこと間は考えを失うこと
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君と私君が泣いた時 私は笑っていた私が泣いた時 君は笑っていたある時君が泣いた時 私も泣いていた私が笑っていた時 君は笑っていたそれから 私は君を忘れ君は私を忘れ色々と人の世に物思っている時君も立ち止まっていたある日 私は君と出会った知らな...
思い出

最期人間に生まれてから少しづつ悲しいことやら 楽しいことが溜まっていきますそして 楽しいことは少しづつ残り悲しいことは沢山残ります積み重さなり 溜まっていって一杯になった時人はことっと死んでいくのだと思われます
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川辺の思い出草原の鴨は 親子で喧しい鱒が静かに藻の間を横切るカエルも私と同様物思いに耽っている眼も何故か瞬く時川の涼風はふと過去との時の接点だ泳ぎに夢中になり夕暮れの薄明の中を家へ急いだこと魚釣り針の指に刺して顔の歪んだこと川はいつも あれ...
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月日この家は昔理容屋だったのが分かります黄ばんだカーテンと少し残る木のガラス窓の白いペンキ昔の賑わいも想像出来ます一時代を終え息子も他所の地に足場を築いたのでしょうか周囲の真新しい家に挟まれてもう栄えることのない家には大事に育てられていた雑...
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細木道小さい頃 はるかな山並みが懐かしかったそれ以来何かをずうっと捜していたような気がするいつか どこかでもう残っている時間も少ない速やかに旅立たなければならないのに古き本の中に捜した時もあったが山を越え 海を越えはるかに行かなければ無いの...
思い出

里芋昔 里芋は生命の糧だった 今も私を力づけるこの畑に荒んだ雨を ことさら丸くして遊ばせている同じ土地に 同じ養分で数千年前も澄んだ心で実っていたであろうそれを見る私と筋肉質の体躯 脂ぎった頭髪少しばかりの装飾品で身を飾った祖先の視線が同じ...