思い出

月日この家は昔理容屋だったのが分かります黄ばんだカーテンと少し残る木のガラス窓の白いペンキ昔の賑わいも想像出来ます一時代を終え息子も他所の地に足場を築いたのでしょうか周囲の真新しい家に挟まれてもう栄えることのない家には大事に育てられていた雑...
夕照り

老いたる日老人よ 朽ちていく木よ年老いたその瞳の内に若かりし頃の記憶が残り 郷愁が残り遠ざかる日々 優しかった者達の顔の思い出が日々の物思いとなり 聞き耳をたてる私はその侘しさの重荷に耐えざるを得なくなることを観念する
供養

死人死人の額に手を触れる冷たい肌だ物体と違う 不思議な冷たさだ私の熱を吸い取っていく渇望した冷たさなのだ何か思いの残るような静かな 静かな冷たさなのだ
朝まだき

英知脳みその真ん中に 小さな箱がある箱の中にキリストが見た 仏陀が見た英知と真実と歓喜がある人間すべてに与えられたその箱は人格の大きさによってまれに開かれる時がある
供養

戦後忘れられた子供たち地理的 歴史的に子供たちは現在を無邪気に遊びたいのに空間に 時間に取り残された多くの子供たち草原にとどまりいつまでも化野には行かないのだ
供養

殺人鬼一人の人間が優しさの中で生まれ愛の中に育ち慈しみを養った体は知恵を持ち悲しみを感じ喜びが湧き怒りは手を握りしめ楽しみは人並みであった愛は切なかったその中に狂気などというのは無に等しいほどのものであった本人を動かしているのは本人以外のも...
夕照り

最期空が白くなり始め音が消える世界は時間が伸びて猫の威嚇の声牛の哀訴私は最期の時間に落ちていった
朝まだき

幼き子等へ貧しい者は父の背中が子を培い富める者は謙虚さが子を育てる真ん中の者は微笑みが子を養う
供養

一生農夫は荒れ地の木をを切る耕地を伸ばし豊かな刈り入れを夢見朝から昼を惜しみ暮れて一日の成果を見るささやかな食事と子供のあどけない目が限りなく彼を奮い立たせた誠実であったある日 鍬が手から離れなくなったそれでも良かったのだが運命の泥濘は 誰...
思い出

細木道小さい頃 はるかな山並みが懐かしかったそれ以来何かをずうっと捜していたような気がするいつか どこかでもう残っている時間も少ない速やかに旅立たなければならないのに古き本の中に捜した時もあったが山を越え 海を越えはるかに行かなければ無いの...