殺人鬼

一人の人間が
優しさの中で生まれ
愛の中に育ち
慈しみを養った
体は
知恵を持ち
悲しみを感じ
喜びが湧き
怒りは手を握りしめ
楽しみは人並みであった
愛は切なかった
その中に狂気などというのは
無に等しいほどのものであった
本人を動かしているのは
本人以外のものであった
宇宙の盲目の意志であった
滅ぶべき人間であるとしても
人が宇宙を裁くことになるのだ