思い出

思い出

細き道

小さい頃 はるかな山並みが懐かしかったそれ以来何かをずうっと捜していたような気がするいつか どこかでもう残っている時間も少ない速やかに旅立たなければならないのに古き本の中に捜した時もあったが山を越え 海を越えはるかに行かなければ無いのであろ...
思い出

里芋

昔 里芋は生命の糧だった 今も私を力づけるこの畑に荒んだ雨を ことさら丸くして遊ばせている同じ土地に 同じ養分で数千年前も澄んだ心で実っていたであろうそれを見る私と筋肉質の体躯 脂ぎった頭髪少しばかりの装飾品で身を飾った祖先の視線が同じにな...
思い出

巡り合い

無窮の時の中で同じ時間に乗った仲間が己が方角を定め 駆けてゆき別々の営み 戦いの中で40数年が経った傷ついた者 行きあぐねた者尚 風雨に胸を張り耐えている者果て知れぬ 巡り尽くせぬ宇宙の地球でふと巡り合った北国の中でしみじみと生い立ちを語る...
思い出

タンポポ

曇天の青空のわずかな日にタンポポは歩き出そうとしていたかつて 向こうの村から大分前の先祖が歩いてきたのを親から聞いていたのだ優しい川が流れニワトリものんびりしていたのをタンポポは立ち上がろうとしている萎えた足を真っ直ぐ伸ばして明日は歩こうと...
思い出

思考の退化

電車はなだらかな川の流れの谷を行楽帰りの親子を乗せて晴天に膨れ上がっていた下半身の汚れた豚は遠くに走り去る者たちを眺めながら考えていた私もあのように遊んだ日から何千年経ったかをまだ 二足歩行で 棒も握れたのにこの道を与えられて日々の無い生活...
思い出

忘れ物(始発駅にて)

私は今帰郷するそばで親子の別離を眺める君達の父は母は 田舎の無骨な人のようだ当てずっぼうな会話も交わされ方言交じりで語られている偉ぶることのない表情の彼等から競い合う原理の道を選んだ子等にまずは頑張れ 困ったことがあったら直ぐ電話をよこせと...
思い出

地球

彼等 花やかな者達は蝶々に生まれてきた君たち 恐ろし気な者は トンボに生まれてきた 慎ましやか者たちは ミミズに騒がしい君はウンカだ僕は蛾だった彼等は善人だ僕は悪人だ唯 皆んな生きてきた食ったり 食われたり皆んな死んでいくんだよそして 宇宙...
思い出

人生

風が吹いていた風が吹いている路地に生まれ懐かしい人達がいた私は今 還っていかなければならない時から離れ 立ち止まり続ける皆が進んでいく 離れていくチョウチョウは強い風に向かって飛びトンボは麦藁帽子を自分の庭にしている黒猫は駆けてきて飛び上が...
思い出

故郷

後になり 先に行き日を重ね 陽は沈みそうして故郷は過ぎていった毎年サクランボは春を思い出しヒマワリは夏に輝いた私は体を育て 思想はできていった既にその町を遠く離れ帰る理由を失くしてしまったのだがいつか又あの思い出を考える時はあるのだろうかし...
思い出

一生

ナメクジに友達はいるのだろうかミミズに仲間はいるのだろうか一緒に戯れることなく個として生きていく共に生きた丘の上に神殿を築いた民の末裔は交わることなく朝を迎えた実に差別的に朝を迎えた