供養

有り難う皆んな笑っている写真の中で笑っているもう 誰もいないのに 影だけになってしまう日がくるのに私を見つめているいつまでも話し合えると思っていたのに毎日 私から離れていく私も彼等を置いていくしかない何時までも有り難うとささやいている
思い出

忘れ物(始発駅にて)私は今帰郷するそばで親子の別離を眺める君達の父は母は 田舎の無骨な人のようだ当てずっぼうな会話も交わされ方言交じりで語られている偉ぶることのない表情の彼等から競い合う原理の道を選んだ子等にまずは頑張れ 困ったことがあった...
夕照り

棒になった人(ジャコメッティ)人間の本質が立っている泣けない人が立っているうしろの無い人間あの人は一歩前に進んだらもう二度と帰ってくることはないのだ
思い出

地球彼等 花やかな者達は蝶々に生まれてきた君たち 恐ろし気な者は トンボに生まれてきた 慎ましやか者たちは ミミズに騒がしい君はウンカだ僕は蛾だった彼等は善人だ僕は悪人だ唯 皆んな生きてきた食ったり 食われたり皆んな死んでいくんだよそして ...
夕照り

遺伝私の耳に今日も心のかなたから絶え間なく響く叫びが届いてくる荒々しく すんでいる私の祖先もその中で生き私の子供たちも包まれていく私はその中で育ちそして 一個の感性になっていく
夕照り

人の世私は一人の大きな悪人でした多くの小悪人の間で温温とした小悪人の間で大悪人は石に座し小悪人は山上に立つ雲霞の中から今日もきびしく大悪人を捜していく
朝まだき

猫猫にも悲しい日はくるのだろうか静かな顔で変わらぬ食事をして良い日が来るのか来ないのか何故か細眼の猫はいない大きな眼を見開いて斜に構えることもなく定めの中で生きていく宿命に恐れず今日も満たされずに家々の角を忍びやかに伺っていく
朝まだき

自然果て無き宇宙 芥の人の身何ものをも超える思考無限の涯を見ている運命の果ての一輪のアザミの花満月の裏寒い月光の中宇宙と一体に命を輝かす風にリズムをとりカエルの声と同調し霧の繁みに情熱を灯す一草も生きている一草も伸びようとしている
思い出

人生風が吹いていた風が吹いている路地に生まれ懐かしい人達がいた私は今 還っていかなければならない時から離れ 立ち止まり続ける皆が進んでいく 離れていくチョウチョウは強い風に向かって飛びトンボは麦藁帽子を自分の庭にしている黒猫は駆けてきて飛び...
供養

お香お香を焚いてあげましょう何もしてやれなかった父母へ私はもう これ位しか力が無いのです今までも大して無かったのです心からのお香を焚きましょうせめて あの空の遠くまで届くように思いをこめてもう 同類となった父母へ最後の勤めのお香を焚きましょ...