夕照り 日々ある小さな町の あまたの人々が大きな おおきな 流れの中肉体を作る細胞のように意識されない存在となって顧みられることもなく 険相を繰り返しながらもしもの自分を捜しているこの大きな宇宙がただ それだけで静まりかえるのなら私は今日も 風に戯... 2024.08.07 夕照り
朝まだき 歳月大きな木立の最初の一茎は人知れず か細く相生相克の中に水路を掴む地の豊穣は 生を育み長き歳月の風雪に頼るものもなく無限の中のわずかな薄皮の間に内部宇宙の荒野を進む 2024.08.07 朝まだき
朝まだき 荒野空漠の荒野を漂うごと行く果ての余りの暗さに一条の光だになく回帰せる者の名残も無く奈落へ進む一個体は善行の何をもってか変えられん狂気と悟達の何れをもってか正に救われん 2024.08.06 朝まだき
朝まだき 光求めて塵芥に夢を託した精神は何光年のかなた 全体にはびこり取り残された心はちゃくちゃくと腐敗が瀰漫し孤独地獄の中で 双眼をひからす宇宙の心奥より吹き来る風は一日中 私を凍らす苦しさに 手を差し上げれば手招きするは禍々しき手のみ一条の光求め... 2024.08.01 朝まだき
夕照り 喪失私はあまりにも多くを失ってしまったようだ今 生の断末魔を聞く蒼白の暗夜に弦月の鋭さ狭小なる内部空間には飛鳥も清花も棲む能わず貧しき肉塊を携えてこの世の生を噛みしめん 2024.07.31 夕照り
朝まだき 日の国その時 日本の少年はリンとして立っていたいつか 幼い妹のカタキを取らんと国は敗れても この子は敗けていなかった リンとしてこの極東のかぼそき民は 優れた民族に追われ追われて東の果てまでたどり着いたのであろう自らの希望を守るため リンと... 2024.07.19 朝まだき
夕照り 淋しい川わたしにはいつからか心の中に渡れぬ川がながれている故郷の深き山より流れきて見えない世の末に消えていく人の世の歩みの全てをのみこむ川であるいつも 私の中に流れている淋しい川である 2024.07.18 夕照り
供養 間無窮の時の間で無法の空間と無尽の凝縮が無数の星の光の網羅のごとく複雑に連関し合っている原子の内部に潜む善意は例えば二者の神韻は偏在し たい積し磁場となれば地獄と化し 極楽と化し永久運動のただ中に無限の与えられた可能性だけが残っていた 2024.07.14 供養
朝まだき 願い南の海に繰り返されたイクサのの後て゜5cmの蟹は 片手5cmのハサミを持ち1cmの飛び出た目で今でも何を招こうとするのか今まで何を見ようとしたのか当てにもならない理想が欲しいのか繰り返す波のように いまだに手招きしている 2024.07.13 朝まだき
夕照り 赤トンボなべて この世は一期の終わりに 手向けの一輪だになく秋のうららに赤トンボは なに選ぶことなく温もりに寄るいざや、辺々に出生の思い出も無きや死所の人家の廊下なる 厠の庇なる屋根の端なるいまや一人立ちて 生に全うなるか 2024.07.10 夕照り