思い出

思い出

タンポポ曇天の青空のわずかな日にタンポポは歩き出そうとしていたかつて 向こうの村から大分前の先祖が歩いてきたのを親から聞いていたのだ優しい川が流れニワトリものんびりしていたのをタンポポは立ち上がろうとしている萎えた足を真っ直ぐ伸ばして明日は...
思い出

思考の退化電車はなだらかな川の流れの谷を行楽帰りの親子を乗せて晴天に膨れ上がっていた下半身の汚れた豚は遠くに走り去る者たちを眺めながら考えていた私もあのように遊んだ日から何千年経ったかをまだ 二足歩行で 棒も握れたのにこの道を与えられて日々...
思い出

忘れ物(始発駅にて)私は今帰郷するそばで親子の別離を眺める君達の父は母は 田舎の無骨な人のようだ当てずっぼうな会話も交わされ方言交じりで語られている偉ぶることのない表情の彼等から競い合う原理の道を選んだ子等にまずは頑張れ 困ったことがあった...
思い出

地球彼等 花やかな者達は蝶々に生まれてきた君たち 恐ろし気な者は トンボに生まれてきた 慎ましやか者たちは ミミズに騒がしい君はウンカだ僕は蛾だった彼等は善人だ僕は悪人だ唯 皆んな生きてきた食ったり 食われたり皆んな死んでいくんだよそして ...
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人生風が吹いていた風が吹いている路地に生まれ懐かしい人達がいた私は今 還っていかなければならない時から離れ 立ち止まり続ける皆が進んでいく 離れていくチョウチョウは強い風に向かって飛びトンボは麦藁帽子を自分の庭にしている黒猫は駆けてきて飛び...
思い出

故郷後になり 先に行き日を重ね 陽は沈みそうして故郷は過ぎていった毎年サクランボは春を思い出しヒマワリは夏に輝いた私は体を育て 思想はできていった既にその町を遠く離れ帰る理由を失くしてしまったのだがいつか又あの思い出を考える時はあるのだろう...
思い出

一生ナメクジに友達はいるのだろうかミミズに仲間はいるのだろうか一緒に戯れることなく個として生きていく共に生きた丘の上に神殿を築いた民の末裔は交わることなく朝を迎えた実に差別的に朝を迎えた
思い出

文明人へ足裏の柔らかさ 手の滑らかさは文明人への成立贅を尽くした廊下を歩き自動販売機が叫ぶ清潔が溢れ 道標は迷いを鎮め木陰は簡潔に並び 祭りばやしが満ちている止まれ私の双脚よふやけ切って自律神経が終わりを告げ秋斂の石の枕に行きつくまで君に語...
思い出

山川世界大宇宙の一点に身を置くはるか昔の門出の扉は固く閉ざされすでに帰るべき道はなく暗黒が全身をおおい 冷気が充満する山川世界のただ中に我に与えられし最後の救いの所在神仏の手が閉ざされようと人々の罵声の中に生きようと行き着くところの自然の落...
思い出

帰郷今夜 はるかな地平線に変人が休んでいます母に聞いた故郷を訪ねて旅を続けている途中なのです人知れずさすらう後姿を夜汽車の窓などから見かける時もあるはずです