日々ある小さな町の あまたの人々が大きな おおきな 流れの中肉体を作る細胞のように意識されない存在となって顧みられることもなく 険相を繰り返しながらもしもの自分を捜しているこの大きな宇宙がただ それだけで静まりかえるのなら私は今日も 風に戯...
夕照り
喪失私はあまりにも多くを失ってしまったようだ今 生の断末魔を聞く蒼白の暗夜に弦月の鋭さ狭小なる内部空間には飛鳥も清花も棲む能わず貧しき肉塊を携えてこの世の生を噛みしめん
淋しい川わたしにはいつからか心の中に渡れぬ川がながれている故郷の深き山より流れきて見えない世の末に消えていく人の世の歩みの全てをのみこむ川であるいつも 私の中に流れている淋しい川である
赤トンボなべて この世は一期の終わりに 手向けの一輪だになく秋のうららに赤トンボは なに選ぶことなく温もりに寄るいざや、辺々に出生の思い出も無きや死所の人家の廊下なる 厠の庇なる屋根の端なるいまや一人立ちて 生に全うなるか
祈り冬の日本海はためく波頭のかなた水平線はお祭りのよう人の頭が動めいているあの亡き人達もいるのだろうか遊びに行ってみたいけれど知っている人はダーレもいないからこの岸辺で眺めていよう私の足から波が砂を削る招いてくれるのはこの波だけかしらオイデ...