赤トンボ
なべて この世は
一期の終わりに 手向けの一輪だになく
秋のうららに
赤トンボは なに選ぶことなく
温もりに寄る
いざや、辺々に出生の思い出も無きや
死所の人家の廊下なる 厠の庇なる
屋根の端なる
いまや一人立ちて 生に全うなるか